皆さま、「ユースエール認定」をご存知でしょうか?
ユースエール認定とは、「若者=ユース(Youth)」、「応援する=エール(Yell)」のとおり、若者の採用や育成に積極的な中小企業に対して、厚生労働大臣が認定する制度のことです。
今回は、丹波市内で初めてユースエール認定を受けた株式会社大進精機の小林社長と入社3年目の矢持さんに、人材育成や職場の様子についてお話を聞いてきました!
矢持さん(左)、小林社長(右)
ユースエール認定のお話を聞く前に、株式会社大進精機の事業について教えてください!
「難切削材加工(なんせっさくざいかこう)」ということですが、これは非常に硬くて、削るのが難しい特殊な金属を加工する技術だと伺いました。具体的にはどんな製品を造られているのでしょうか?
創業当時から造り続けているものは、船舶のディーゼルエンジンの燃料噴射ノズルですね。重油を吹き出すところです。
大型船のエンジン部品は、何か月もの航海で高温に長期間さらされるので、コバルト基合金などの熱に強くて非常に硬い素材を加工しています。
タンカーなどの大型船のほかに、防衛省関連の部品なども造っています。
船舶関係以外だと発電所や、ここ最近は水素ステーション関係の部品加工が伸びています。
技能を駆使し、加工が難しい素材からさまざまな分野で活躍する高品質部品を製造されています。
水素ステーション!?
水素ステーションは、燃料となる水素を供給する施設で、ガソリンスタンドの水素版です。その水素ステーション向けのバルブの関連部品として使用されており、「下町ロケット」の帝国重工のロケ地にもなったバルブメーカーの部品も加工しています。
ということは、株式会社大進精機は「佃製作所」ですね!笑
防衛省から、国の装備品等の製造を支える事業者として「君シカオラン認定」を受けておられます。
防衛省関係の部品は加工が難しい素材が多く、求められる加工精度も高いそうです。
2022年に丹波市内の企業で初めてユースエール認定を受けられましたが、ユースエール認定については以前からご存知だったのですか?
全く知りませんでした。
これまで、ハローワークに10年近く求人を出していましたが、応募がない状況が続いていました。そこで、ハローワークで会社の状況をヒアリングしてもらいユースエール認定について教えてもらいました。
ユースエール認定を受けるには厳しい要件がありますし、認定後も更新があるので、毎年それをクリアされていることがすごいですね!
認定を受けてから、さらに力を入れたことや、取り組んでいることはありますか?
まずは就業規則を見直しました。育児休業の制度を改正して、さっそく、男性従業員が9日間の育児休暇を取得しました。
あとは、ユースエール認定を受けてから若い人たちがどんどん入社していますし、中途入社する従業員も多いので、いろんな従業員の話を聞くようにしています。
「自販機を設置して欲しい!」というような従業員の声を大切にしながら、できることから前向きに見直しています。
自販機の設置もそうですが、なによりも従業員の声を聞いていただけるのは嬉しいですね!

ユースエール認定をはじめ、国や県などのさまざまな認定を受けておられます。
ユースエール認定後に入社された矢持さんのお話を聞かせてください。
矢持さんは、どういうきっかけで入社されたんですか?
高校を卒業後、大阪の専門学校に進学しました。その後、丹波市に戻って一旦就職しましたが、自分の時間が持てずに転職を考えました。
ハローワークに相談したときに、ユースエール認定のことや、この会社の事業内容を教えてもらったことがきっかけですね。
ユースエール認定を受けていることが転職の決め手になった感じですか?
そうですね!
ハローワークで「ユースエール」という言葉を初めて知って、詳しく聞いてみると、社員のために残業を減らすことに取り組んだり、休暇を取りやすくするような、簡単に言うとホワイト企業に与えられる認定だということを知りました。
そのうえで、自分がやりたいものづくりの会社だったので、応募の決め手になりました。
ものづくりの仕事がしたかったということですが、どんな仕事をされているんですか?
入社当初は、「汎用旋盤(はんようせんばん)」という自分の手でハンドルを操作して、感覚を頼りに金属を削る機械で経験を積みました。今は「NC旋盤(えぬしーせんばん)」というプログラムを組んで自動制御する機械を使った金属加工をしています。
特殊な技術がいりそうですね。
高校や専門学校で機械加工を学ばれたんですか?
全然違います。笑
専門学校では違う分野を学びました。
まったく未経験の仕事は難しくなかったですか?
機械加工の仕事は数字を扱うことが多くて、関数計算とか苦手でしたし、失敗することもありましたが、先輩の指導や外部研修を受けたりすることで、少しずつできるようになりましたね。
最近では、機械の動作プログラムを組むようになり、依頼された作業はほとんど1人でできるようになりました!
入社したらまずは基礎教育を行って、現場で先輩が付きながらOJTで教えていきます。そして、週1回の外部研修に1年間通ってもらっています。もちろん研修費用は会社負担です。
会社の費用負担で研修が受けられることは嬉しい!
でも、1年間も研修に通うのは、なかなか大変そうですね。
最初は大変でしたが、仕事で使うことばかりを教えてもらえるので、研修を受けて良かったです。
図面の見方や書き方などもすべて一から教えてもらえたので、入社した時にはできなかったことができるようになりました。
成長が実感できるとモチベーションが上がりますね!
これからどんな風になっていきたいとか、目標はありますか?
直近の目標としては、独り立ちすることをめざしています。
複数の工作機械を同時に扱えるようになって、少しでも効率よく作業し、会社に貢献できるようになりたいですね!

「自分が加工した工程の品質は絶対に保証する」という「自工程品質保証」を心掛けて、精密部品を造り上げられています。
未経験の従業員の方は、どのぐらいの期間でプログラムを組んだりできるのでしょうか?
入社当初はハンドルで操作する汎用旋盤や、削った製品のバリ取りといった、金属加工の基礎となる作業を担当してもらいます。これらを経験した後に、プログラミングで動かすNC旋盤を担当してもらいますが、他の従業員も同じように勉強して扱えるようになります。
工作機械を使いこなし、専門性の高い製品を製造できるようになるまでには、少なくとも5年、長ければ10年ほどを要します。弊社では、複数台の機械を使いこなし、あらゆる形状の加工に対応できる一人前の人材を育成するため、従業員の多能工化を進めています。
それぞれの作業に技能検定があって、矢持くんもすでに汎用旋盤3級の国家資格を取得し、今年度はNC旋盤3級の取得に向けて取り組み、無事合格しました。
先輩従業員の多くが複数の上位の級を取得し、中には1級や特級の資格を取得している人もいます。
今後、矢持くんも上級の資格をめざして頑張ってほしいです。
矢持くんは何でもやりたいと意欲的に取り組みますし、センスもあるので期待しています!

社内には従業員が取得した特級・1級の技能検定合格証がずらりと並んでいます。
社長の前で言いづらいかもしれませんが、職場の雰囲気はどうですか?
「もっとこうして欲しい!」とかありませんか?笑
僕が実際そうだったように、未経験で入ったけど丁寧に教えてもらえますし、今のところはこうしてほしいとか求めるところはないですね。笑
休みも安定していて、プライベートの時間がつくりやすいですし、うちの会社は良いですよ!笑
ユースエールの認定基準には、有給休暇の取得率も要件にありますね。
昨年の実績は、平均取得日数12.5日で取得率79%でした。
認定基準の要件は取得日数10日、取得率70%なので要件はクリアしています。
有給休暇も取りやすい雰囲気があります!
実際、使い切りそうになって困るぐらい休暇をいただいています。笑
プライベートと両立できることは、これから就職を考える人にとっても大きなメリットですね。
今年度も新入社員の採用はありましたか?
採用しました!専門学校を卒業した全く未経験の方です。
認定を受けるまでは求人を出しても応募がなくて、知人や友人の紹介で社員を探していたんですが、2022年にユースエール認定を受けてからは、中途採用も含めて11人目の採用です。認定後は毎年新卒者の応募もあり、採用の幅が広がっています。
すごいですね!ユースエール認定の効果はどのように感じられますか?
うちの会社では、まず工場を見学してもらい、働くイメージを持ち、納得できたら応募してくださいという考えを大切にしています。
工場見学は随時受け付けています。求職者の方がハローワークで就職相談をされると、ユースエール認定企業として当社をすすめていただいているようです。その結果、実際の応募にもつながっていますね。
事前に見学させてもらえると、入社後のミスマッチも防げて安心ですね!
今後、会社として力を入れていきたいことはありますか?
今はやっぱり、入社してくれた若い人たちの育成、成長させることです!
それが会社の成長にもつながっていきます。会社の成長とともに、採用も拡大できるようにしていきたいです。
お話を聞いてみて、従業員が安心して成長できる環境が整ったユースエール認定にふさわしい職場だと感じました!これからも株式会社大進精機の成長を期待しています!
小林社長、矢持さん、ありがとうございました!
まとめ
ユースエール認定の主な要件は次の3つです。
・新卒採用者が入社後3年以内に離職した割合が20%以下であること。
・正社員の月平均の残業時間が20時間以下であり、月平均の残業時間が60時間以上の正社員が1人もいないこと。
・有給休暇の取得率が平均70%以上か、または、年間取得日数が平均10日以上であること。
そのため、ユースエール認定を受けていることは、若手従業員に限らず、全ての従業員にとって「働きやすい会社」ということを示す認定だと感じました!
そんなユースエール認定を受けた市内企業は、次のとおりです。
ぜひチェックしてみてください!
【丹波市内のユースエール認定企業一覧】
・ 株式会社大進精機
・ 兵庫パルプ工業株式会社
・ 山南合成化学株式会社
・ 株式会社氷上製作所・ 株式会社大地農園
※認定一覧は、2025年10月時点