就職を考える高校生×地元で働く先輩社員 CROSS TALK座談会

【出席者】
〈社会人〉
梶原 瑠翔 丹寿荘(市島町)
中野 亮祐 兵庫パルプ工業(山南町)
小畠 禅司 丹波ひかみ農業協同組合(氷上町)
上田 篤志 大進精機(市島町)

〈高校生〉
酒井 啓輔 篠山産業高校2年
井関 一翔 篠山産業高校2年
山口 大瀧 篠山産業高校2年
谷  拓海 氷上西高校2年
松本 琉雅 氷上西高校2年

〈司会進行〉
荻野 祐一(丹波新聞社会長)

丹波市では、高校卒業後、就職や進学で転出する若者が多く、市内企業では若い世代の人材不足が課題になっている。この課題解決の一環として丹波市は、就職を考えている高校生たちに地元で働くことの魅力を伝え、地元就職を増やそうと、地元の事業所で働く先輩社員と来春卒業予定の地元高校生との「クロストーク」(座談会)を、たんば黎明館で催した。先輩社員たちは、勤めている事業所に入社した理由や地元で働く良さなどを高校生に語りかけ、高校生たちは、どんな分野への就職を考えているかなどを打ち明けた。クロストークの模様を紹介する。

―まずは社会人の皆さんにお尋ねします。今の事業所に入ったのは、どのような動機からでしょうか。

梶原 私は県社会福祉事業団に入り、丹寿荘に配属されました。もともと介護職を志していたわけではなく、事務や総務の仕事ができればと思っていました。ただ、県社会福祉事業団で面談を受けた時、「介護はどうですか」と聞かれ、「やってみたい」と答えました。というのは、氷上町に祖父母がいるのですが、がんを患っていた祖父の介助をした経験があり、人の役に立つことの意義を知ったからです。

中野 私は山南町に住んでおり、篠山産業高校の機械科を卒業しました。就職先を考えるにあたって家から通える会社を探した時に、建築廃材を再利用し、電気に変えるバイオマスエネルギーに取り組んでいる兵庫パルプ工業を知りました。段ボールのもとになるパルプも作っていますが、段ボールはこの先もなくなることはなく、安定性のある会社だと思いました。親からも、いい会社だと勧められました。都会で働くことへのあこがれもありましたが、都会は家賃が高いことを思うと、実家に住んで会社に通う方が生活面で余裕があるかなと思いました。

小畠 私は都会の騒がしい感じが苦手で、都会での一人暮らしが心配でもあり、地元で働きたいと思っていました。地元企業の中で、地域と親密な関係の企業はないかなと思った時にJAが浮かびました。私は氷上高校の食品ビジネス科で学び、農業に関心があったし、簿記も勉強していたので、その知識が生かせるのではと思ったのです。それと、我が家に出入りされていたJAの職員の方から「JAで働いてみないか」と勧められたのもきっかけになりました。

上田 私は、転職をして今の会社の大進精機に入りました。諸事情で前の会社を辞め、転職先を探した時にハローワークの方から「この企業はどうですか」と勧められたんです。ユースエールの認定企業ということでした。会社を見学し、雇用条件を聞くと、残業が少なく、有給休暇が取りやすく、離職率も低いということで、自分の希望に合うと思いました。前に勤めていた会社とは仕事内容が違いましたが、同じ製造業だし、一からやってみようと思い、入社しました。

―今の話に出たユースエール認定企業について高校生の皆さんに説明します。これは若者の採用や育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な企業のことで厚生労働大臣が認定します。簡単に言うと、残業時間が少なく、有給休暇の取得率が高く、離職率が低い企業です。丹波市内では大進精機と兵庫パルプ工業が認定を受けています。上田さんと中野さん、それぞれ残業時間などはいかがですか。

上田 残業時間は月平均で10時間もありません。多い時で12時間です。有給休暇もしっかりとれています。

中野 残業時間は月平均で17時間程度です。休みも自分の思い通りにとれます。

―では、次に高校生の皆さんにお尋ねします。どんな分野の仕事をしたいと思っているのか、地元で就職したいと思っているのか。いかがですか。

高校生1 僕は篠山産業高校の機械工学科で学んでいます。まだ就職希望先を絞れてはいませんが、学校で学んだことが生かせる製造業の会社に入りたいと思っています。都会での一人暮らしが心配なので、丹波市内の企業で働きたいです。

高校生2 僕も工業系の仕事に就きたいと思っています。家から通う方が経済的にも肉体的にも楽だと思うので、地元就職を考えています。家から通えるならば三田市や福知山市の企業でもいいです。

高校生3 僕は建設コースで学んでいます。3年生になれば測量士補や土木施工などの資格を取ろうと勉強しており、そんな資格が生かせる仕事に就きたいと考えています。以前は、都会に出たいと思っていました。というのは、丹波市には遊ぶ場所が少ないからです。ゲームセンター巡りをしたり、映画を見に行くためには大阪や三田に行かないといけないので。でも、山に囲まれた自然が好きなこともあり、就職を考えるようになった今は、地元もいいかなと思い始めています。

高校生4 僕は丹波市役所をめざしています。市役所に勤めている父の背中を見て育ったことも理由ですが、一緒に住んでいる祖母が認知症などを患い、辛く当たったことを後悔しているのも理由です。祖母だけでなく、困っておられる高齢者を助ける仕事ができればと思い、昨年10月、丹波市役所の介護保険課にインターンシップで行かせてもらい、介護保険制度などを学びました。看護師にも興味があり、オープンスクールにも行きましたが、市役所の介護保険課で働ければと思っています。都会に出たい気持ちもないではないですが、今は丹波市役所一本です。

高校生5 僕は、自分のできることと、自分のやりたいこととを分けて考えています。電卓関連の検定に合格したこともあり、できることとして事務職、やりたいことはカフェで働くことです。接客業のカフェは、人の笑顔が間近で見られるからです。僕は都会に出たいです。住んでいる地域は交通の便が悪いので、交通事情のいい所に住みたい。人がたくさんいるのも好きです。ただ、都会での一人暮らしは心配な面もあります。

―社会人の皆さんにお尋ねします。地元で働いて良かったと思うことはありますか。

梶原 私は西脇市の出身で、今は丹波市に住んでいます。小学生の頃、毎週土日曜日には祖父母のいる氷上町に来ていて、なじみのある土地でした。地方は確かに交通の便が悪いですが、自動車があれば、不便も気にならないです。西脇の実家にもすぐ帰れるし、丹波市での生活を満喫しています。

中野 地元では、慣れた道で通勤できるのがいいですね。都会の道は、一方通行があったりして複雑。それを思うと、地元がいいです。

小畠 地元で就職し、丹波市から奨励金をいただき、ありがたかったです。都会で過去に危ない目に遭ったこともあるので、田舎の方が安心感があります。

上田 高卒で働き始めましたが、大卒に比べると給料が安い。でも、実家から通うと、自由に使えるお金を持てるのがいいです。

―仕事のやりがいはどうですか。

梶原 高齢者の介助をしていて、「ありがとう」「あんたが来てくれてよかったわ」など、あたたかい言葉をいただきます。そんな言葉にこちらも気持ちがあたたかくなります。しんどい面もありますが、あたたかい言葉が返ってくるのがやりがいです。

中野 兵庫パルプ工業で働いて7年になりますが、先に話したバイオマスエネルギーなど、すごいことをしている会社だと実感しています。環境を壊して電力をつくっている会社がありますが、弊社では、要らないとされたものを再利用し、丹波市の全世帯で消費される約6倍もの電力をつくっており、環境にやさしく、地域にも貢献しています。そのことを誇りに思います。

小畠 金融の窓口を担当していますが、事務処理が難しく、最初はしんどかったです。でも、勉強しているうちに、できる事務処理も増えました。目標を達成した時は充実感があります。お客さんとおしゃべりし、交流するのも楽しいです。

上田 一昨年の9月に転職した今の会社での仕事内容は初めてのことでした。加工機で削りにくい金属素材を精密に加工する仕事なのですが、何もわからないままに始め、会社の人につきっきりで一から教えてもらいました。おかげで今ではわかるようになり、昨年、機械加工の検定に合格しました。自分が成長しているのがわかります。それがうれしいですね。

―高校生の皆さんにお尋ねします。就職先を考える時、重要視するポイントは何でしょうか。

高校生1 まずは休日が多いことです。次は福利厚生が充実していること。先輩とのコミュニケーションが取りやすいこともポイントです。

高校生2 給料が多いことです。自分のやりたいことができ、買いたい物が買えるだけの給料をもらいたいからです。

高校生3 僕は給料よりも残業が少ないなどの就業時間です。登山や昆虫採集、魚釣りが趣味で、趣味を楽しめる時間を持てることが大事です。

高校生4 職場の人間関係が良好なことです。

高校生5 やりがいのあることが一番大事だと思っています。やりがいがあれば、仕事を続けられると思うからです。

―社会人の皆さんは休日をどのように過ごされていますか。

梶原 職場は3交代勤務なので土日が休みとは限りませんが、友達と休みが合う時は一緒に温泉や食事に行ったりしています。合わない時は、おばあちゃんの買い物に付き合ったりしています。

中野 私も3交代勤務で平日に休みが多かったりしますが、職場は若い人が多く、先輩と後輩との仲も良く、一緒にボウリングに行ったりしています。

小畠 JAには野球部があり、大会に出たりしています。ジムでトレーニングをしたり、職場の同期と温泉や食事に行くこともあります。

上田 家にいれば、友達と電話で通話しながらゲームをしたり、外出する時は、近場だと福知山、遠くだと大阪や東京に出かけています。

―高校生の皆さんから先輩に尋ねたいことがありますか。

高校生3 高校生のうちから習慣づけておいた方がいいことはありますか。

小畠 勤め出してからポケットにメモ帳を入れ、教えられたことを忘れないよう、すぐにメモを取っています。だから、メモを取る習慣ですね。

梶原 就職するぎりぎりまで朝と夜が逆転した生活を送っていた反省から、生活習慣を整えることをお勧めします。

上田 継続する力が大事なので、部活動をやっているのならば、部活動に休まずに行くようにしてください。

中野 学校だと、休みたいと思えば休めますが、会社だと周りに迷惑をかけるので、そうはいきません。そんな全体に対する責任感を身につけてほしいです。

―最後に改めて社会人の立場から高校生の皆さんにアドバイスをお願いします。

梶原 私は、学生時代、介護について何も勉強することなく、介護の世界に入りました。入ってから勉強し、何とか頑張っていますが、勉強することの大切さが身にしみました。ですので、もし進みたい道が具体的に決まっているのなら、それに向けて勉強することを勧めます。

中野 会社に入っても勉強が大事なので、勉強する癖をつけておくことです。遊ぶ時は遊び、勉強する時は勉強する。そんなけじめを身につけてほしい。

小畠 学生時代には、学生時代にしかない良さがあるので、高校生活をしっかり楽しんでください。一方、社会に出れば年上の人とも接することになるので、今のうちからコミュニケーション力を養ってほしいですね。

上田 就職先を選ぶ際に給与などの雇用条件も大事ですが、そればかりに目をとらわれず、どんな会社なのか十分に調べることが必要です。