薬草薬樹公園は、その名前の通り、園内一面に薬草の木々や花が生えており、緑豊かな自然を感じることができます。敷地内にある「丹波の湯」は、市内外を問わず多くの方が訪れる人気施設です。開設当初から地域の薬草文化や歴史を伝え続けるべく、地元の人々と共に運営されている施設です。
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・「薬草の普及」を軸に、様々な事業を展開
・支配人の略歴と、地域の歴史
・今後の展望と、求める人材像
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今回は、支配人の垣田善之さんにお話を伺ってきました。
薬草薬樹公園の事業概要を教えてください。
薬草薬樹公園という名前の通り、1988年に公園の植栽からスタートしました。2005年には薬草の普及を目的とした「リフレッシュ館」がオープンし、薬草風呂などの温浴施設と薬膳料理などを提供するレストランが設置されております。そこでは、薬草を使ったお土産も販売しております。
その他にも、「遊工房」という農産物加工処理施設では、薬草の乾燥や食材の加工を手掛けておりまして、そこではパン作り体験や陶芸体験、薬草を使った草木染め体験なども行っています。
そして、コロナ禍以降には、新たにバーベキュー場とグランドゴルフ場を増設したことで、地元の方だけでなく、阪神間などの遠方からもご利用いただいております。
リフレッシュ館がオープンするまでは、丹波市に合併する前の山南町が運営していたものを、2010年から弊社、株式会社ウェルネスサプライが指定管理者として運営するようになった流れですね。
株式会社ウェルネスサプライについて簡単に事業概要を教えてください。
主に、関東エリアから九州エリアにあるスポーツやレジャー、宿泊施設などの運営管理を行っている会社です。直営では、保育事業やグランピング事業なども行っています。正社員数は約170名で、兵庫県内では神戸市のしあわせの村、加古川市の日岡山公園、西宮市の兵庫県立総合体育館などを指定管理者として運営しています。
薬草薬樹公園に来られるお客さんは市内の人が多いですか?
平日は市内の方が非常に多いです。土日は主に阪神間からですが、姫路や加古川あたりの方もいらっしゃいますし、近畿一円からお越しいただけておりますね。温浴施設などのご利用以外にも、公園内を散歩される方など、いろんな形でご利用いただいております。
加工処理施設を地元の人もお借りしたりするという話を聞いたことがあります。
よくご存じですね。主に口コミで広がってます。一般的な野菜の乾燥とは違い、薬草の乾燥ということになりますので、実を言うと用途はとても限られています。この辺りの和田地区は「漢方と若松と菊の里」と言うだけあって、例えば若松の種用に松ぼっくりを乾燥させたりするんですね。ですので、地元の方向けにお貸しすることが多いです。
他にはレトルト加工設備を備えています。いわゆるパウチ食品を蒸気殺菌するんですが、そちらは市内外を問わず、ご自宅にそういった設備がない方や、日持ちするものを作りたいといった個人の利用が多いですね。
なるほど、その遊工房もこの施設の中にあるんですか?
厳密に言いますと、薬草薬樹公園と遊工房があり、公園の中に温浴施設やレストランがあるリフレッシュ館とバーベキュー場、グランドゴルフ場があり、遊工房は隣接している形で別の建物になりますね。
事業の中に薬草の普及があるというお話でしたが、薬草をここで育ててたりするんですか?
それが植栽ですね。ただ、ここで育てたものを販売したり商品としてお風呂に使ったりはしておらず、どちらかといえば観賞用に近いイメージで、植物園に近いです。
なるほど、では薬草風呂の素を販売されていたりするのは、委託して作ってもらってるんですか?
地域に薬草生産組合という団体がありまして、そちらが薬草風呂で使っている当帰という薬草を栽培されています。当帰の根っこはお薬として出荷されますが、以前まで葉っぱは捨てていたんですね。
でも、地元の方々はそれを自宅のお風呂に入れていて、すごく評判がいいということがあり、「では葉っぱを施設として利用しよう」ということで、リフレッシュ館ができたタイミングからここの温浴施設で使い始めた経緯があります。
大学との連携もされていますが、どういった経緯でやることになったんでしょう?
兵庫医科大学さんが、ゼミの中で「地域振興」をテーマにされていて、その関係から和田地区と連携することになり、我々は地区の一施設という立ち位置です。大学の役割としては商品開発に重きを置かれてますので、商品開発や販売のところでご一緒させていただきました。
地元地域との関わりはどういったものがありますか?
大きくは「漢方の里まつり」ですね。薬草はこの地区の歴史に根付いてますので、この施設は自分たちの施設といった愛着を持っていただいておりますので、兼ねてから相互に協力しましょうといった体制は強く持っています。
通常、地区の祭りといえば地元の小学校やグラウンドで行うものですが、先ほどの祭りの際には施設や駐車場をお貸しして、大々的にやるのが特徴です。他にも地区の山の案内をお願いしたり、学校の授業に講師とお呼ばれすることもありますし、こども園の方も毎月のように散歩に来られますので、日頃から関わりは多いです。
そう考えると、ここの運営は本当に多岐に渡りますね。
そうですね、そもそも薬草というのがかなりニッチなものですし、これまで他の指定管理業者の手がなかなか挙がってこないのは、そういったところに起因しているとは思いますね。
公園の植栽は専門家からすれば魅力的なんだと思いますが、一般人はなかなか理解できなさそうですね。
いわゆる希少種が結構あります。以前は茶色の板に薬草などの名前が書いてあって「ここの生薬部位はこれですよ」といった説明の看板があったんですけれども、やはり素通りされるのと劣化いうことで、4年ほど前からQRコードの看板に変えました。今では一般の方でも気になったところで、スマホで読み取ってらっしゃる方が結構いらっしゃいますね。
支配人の垣田さんについて教えてください。
丹波市市島町の出身で、高校は篠山産業高校に行ってました。しばらく大阪に出て働いてたんですが、2014年に丹波市で起こった豪雨災害で実家が半壊したんですね。兄弟はもう所帯を持っていたんですが、僕は単身だったこともあり、丹波市へ戻ることになりました。
豪雨災害は本当に大変でしたね。
実家のこともあってしばらくは定職につかず、派遣や契約社員で2年ほどした頃にようやく落ち着いてきたんです。その時は「もう地元で就職しようかな」と考え始め、2017年にこちらへ入社しました。
なるほど。当時から薬草に興味はあったんですか?
正直、当時は薬草というよりは施設の方に興味がありました。そこから業務上、自然と薬草に触れる機会が増えていきました。もともと野菜や米作りには興味がありましたので、「同じような括りで頭に入ってくるかな?」といった具合で勉強を始めましたね。
薬草と言えば歴史が深くて、それこそ講師として呼ばれるとなれば相当勉強が必要だったのではと思いますが。
どちらかと言うと、漢方そのものよりも、地区の歴史や薬草薬樹公園の業務内容といった話をすることが多いですね。そもそも、薬機法や薬事法の関係で、薬草の効果や効能は謳いにくい側面がありますし、あとはこの辺りの地区がどうして薬草を生産するようになったかのいわれだとか、そういった語り部的なところの方が要望としては多いです。
丹波市内の人でも、この地区以外の人は薬草のことや産地であることをあまり知らないような気がします。
和田地区では、当帰やセネガといった薬草が当たり前のように植えられていて、子どもたちも小さい頃からその光景を目にしていますが、丹波市全域がそうではないんですね。
和田地区のみの文化や歴史として少し限定的になっていますが、ここら一帯は県下でも有数の薬草の産地であることは間違いありません。市外の人に限らず、丹波市内の方々にも広く知っていただけたらなと常々思いますね。
僕自身も正直、薬草薬樹公園ってどうしても温浴施設を目的に訪れますし、薬草そのものに触れる機会があまりないですね。
薬草と言えばイメージしづらいですが、例えばカレーに使うような香辛料の類が結構あるんですよ。レストランで提供している薬膳カレーでは松の実や蓮の実を使っていたりしますが、それで興味持たれた方がご自宅で使ってみようだとか、次に繋がることがありますね。
館内の展示や、公園の植栽を見ていただくようお勧めしたりと、薬草に興味をもっていただけるような導線作りは、すごい気持ちを込めて用意していたりします。
ここの指定管理業務は、薬草の普及が最終的な目的ということでしたね。
根本的にはそうです。ただ、歴史の背景としては、江戸時代はここら一帯の土質がいわゆる砂地で、普通の農業が難しかったことから、当時は非常に希少だった薬草の栽培を始められたんです。
移りゆく時代の中、先人が苦労されてこの地域を築いてこられましたので、「これは文化として後世に残していかなければならない」という想いのもと薬草薬樹公園が作られたんですね。
コンセプトがそこにありますので、薬草を資源とした観光開発や観光振興だけでなく、そういった文化や歴史を紡いで活性化いくことが、我々のミッションです。
今後の展望をお聞かせください
まずはお客様にお越しいただき、ご満足いただけるよう尽力することが大前提で、やはり少しずつでも変化のある施設にしていきたいです。飽きを感じさせないように工夫し続けることで、大きな変化に繋げていければと考えています。
例えば、以前行ったもので薬研(やげん)体験があります。薬草はやはりニッチなところがあるので、薬作りではなく道具に触れる体験から興味を持っていただけるのではないかと思い実施してみたもので、有難いことにリピーターでお越しいただく方や、イベント日以外でもやってほしいといったお声をいただきましたね。
薬研体験、楽しそうですね!
あと、薬草をご自身で育ててみたいという方に当帰の苗を販売しようと、生産組合と医科大学に相談して実施してみたんですが、1年分として500株ほど用意したものが1ヶ月もしないうちに完売したこともあって、すごい驚きました。
育ててみたいという方は多くいらっしゃるんですね。
花もやっぱりキレイですし、種も採れるのが人気ですね。ただ、やはり大規模な栽培となれば技術がいるんです。もともと、薬草のほとんどが野草で、植生自体はすごく強いんですが、人工的に効率よく増やすというのが難しいのです。
以前までは県立の研究センターもあって、町や市、県が薬草農業指導として地域と取り組んでこられた事業ですので、この地域の栽培に関するノウハウは非常に高いものがありますね。
正社員は現在何人いらっしゃるんですか?
薬草薬樹公園は今4名ですね。パートが30名です。
ここで働かれてる方のほとんどは丹波市内の方ですか?
そうですね。9割ほどが市内の方です。それこそほとんどが山南町の方です。もっと言うと、この和田地区に住まれている方が多いですね。
今後、どういう人に入社してほしいといった人材像はありますか?
やはり事業を継承していくために、正社員は今後できるだけ長きにわたって担っていただけるような世代の方に入社していただけると嬉しいです。
最初から薬草に興味を持っている方が入社を希望されるのが一番嬉しいんですけども、まずは温浴施設やレストランといった施設をきっかけにとして興味を持っていただくのもいいと思っています。
弊社には80代の方もおられますし、25年以上働いてる方々もいらっしゃいます。中途採用はもちろん、高卒や大卒などの新卒でも、これまでの知識や経験、ノウハウをちゃんと教えていきます。地域の方々とも一緒に、当施設の運営や薬草の普及に興味がある方はぜひ、お問い合わせください。