柏原加工紙株式会社は、日本で唯一となった糸入り加工等、紙の加工に特化した会社です。 創業から60年目を迎えるにあたり、これからを担う人材を求めているということでインタビューに行ってきました。
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◆大事に繋いできた機械が今や世界に一つだけに。そこから得た企業としての強み
◆自分発信のもので世の中に勝負できる。自分自身で仕事が完結することのやりがい
◆SDGsといった世の中の流れを汲む企業として。逆境をチャンスに変えていく仲間を募集中
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代表取締役の矢本雅則社長と、娘さんでもあるteshio事業部リーダーの矢本章子さんにお話を伺いました。
柏原加工紙株式会社の設立の流れを教えてください。
(社長)
創業は先代の父が1961年に設立し、今から22年前の1999年に私が就任しました。元々は、先代が戦争終わって帰ってきた時に今の「ネクスタ株式会社」っていう会社があり、昔は渡辺製袋所という名前でした。そこがもともと氷上町出身の方の会社でそこへ勤めて、ちょうど柏原町で紙袋の製袋と製紙、そしていわゆる加工紙、3つの事業を行っていたんです。
それがちょうど戦後、加工紙の分野はもうやめるということで、勤めていた父が加工紙の部分で独立することになった、という経緯で始まりました。
私自身は、丹波市を出てから大阪・東京で同じ加工紙の大手企業に3年間程おりまして、それから帰ってきて家業に合流しました。
なるほど。では柏原加工紙株式会社の主な事業は名前の通り紙の加工ということでしょうか?
(章子さん)
そうですね、紙の一次・二次・三次加工までをメインとしています。紙自体を製造しているわけではなく、紙の原紙を仕入れてきて、その紙に更にエンボス(凹凸)加工をしたり、ワックス加工で防水性を出したり。そういう二次、三次加工ができるような加工機を弊社は持ち合わせており、機能性を与えた紙を製造しています。
三次加工という聞き慣れない響きがなんだかすごいですね。紙の加工を行う業態は全国的に珍しいものなのでしょうか?
(社長)
加工紙業界は、関西から広まり業界全体としてはそんなになくて、現在は全国で20社もないと思います。多い時は60社程ありました。特に特徴的な、紙と紙の間に糸を編み込んで入れる「糸入り加工」ができるのは弊社だけとなりました。糸をいれる機械そのものが日本にないんです。部品が壊れたら特注で作ってもらって、なかなか手間暇がかかるんですが、大切に扱いながら今を迎えています。
(章子さん)
弊社の強みが、いつの間にか日本に一つしかない加工機になり注目されるようになりました。
この糸入り加工の紙、なんかすごいですね!紙のようで紙じゃないようで。
(社長)
去年は全国的にも有名な生活用品店に、ブックカバーや袋などの商品として採用してもらいました。おかげ様でその後、良い出会いもありました。
(章子さん)
そうですね。今も販売していただき、teshio paperが動き出して、大手からも認知されるようになってきて。とてもありがたいことです。
teshio paperの始まりはいつからだったんでしょう? そういえば私が初めて柏原加工紙様の加工紙を見たのは2012年の“歌とピクニック”という市島町でのイベントでした。
(社長)
そうでしたね。たまたま提供したんですよ。糸入り加工と防水加工を施した紙を簡易レジャーシートとしてですね。
(章子さん)
その時、私はまだ入社していなくて。社長が歌とピクニックを運営されてた方とそういう話になったようです。
(社長)
歌とピクニックと出会ってから、一般消費者向けとして需要があるんじゃないかと気がついたんですよ。
あー、あれがきっかけだったんですね!
(章子さん)
それから『ブランディングをしていきませんか?』と、話になり。
会社のこういった加工紙を、これまでとは違う別のルートで、売り出せないかという話になったと聞いています。人の手による高度な技術を用いた「手塩にかけた紙」。
日本料理ならではの多種多様な料理に対応する「おてしょ」小皿のように、様々な用途に小ロットにも対応出来る柔軟性のある製品づくりを目指していこうということでteshio paperと名付けられました。「紙を超えた紙」と銘打ってロゴも作り、ホームページなども新たに起ち上げて、という流れで始まりました。当初はお花業界から進出していったっていう経緯です。
大きな卸業者が日本に2社あり、そのうちの一社の配送センターが実はすぐ近所で、主にそこで取り扱ってもらっています。
なるほど。ではteshio paperは基本的にはBusiness(企業) to Consumer(消費者)ですか?
(社長)
当初は“B to B to C”といってたのですが、Cに近いBと。今でもそうです。
(章子さん)
そこは変わらず。
(社長)
最近売り出している商品は、“クルクル花ぐるまキット”など。作って、楽しめるキットをインターネットで販売もしています。ゆくゆくは一般消費者の方に向けて雑貨の商品も増やしていきたいと考えています。
(章子さん)
まだ、なかなか手をつけられていませんが…
なるほど、よくわかりました。では今後の経営計画について教えてください。話の流れ的には今後の主力はteshio paperということでしょうか?
(章子さん)
B to C向け商材としてのteshio paperもですが、やはり主となっているB to B向けの物流用資材の商品開発も進めています。
(社長)
後者はいわゆる、“SDGs”ですね。
ああ、例えばプラスチック製の袋を紙で、とかいう感じでしょうか?
(章子さん)
そうですね。
(社長)
ゴミ箱に捨てていた梱包資材がリサイクルにいけばいいなと考えています。
2025年に開催予定の大阪万博も、開催目的がSDGsと設定されていますね。
(章子さん)
世の中がそういった、環境への意識が高い会社は既に取り組まれていたりするので。
弊社でも商品開発を急いでいるところです。
素敵ですね、よくわかりました。それで今回の求人ですが、どういった方の募集をされるのでしょう?
(社長)
工場の機械オペレーターと、営業ですね。営業は企画営業というのが適切でしょうか。我々の開発する製品を、どうやって販売していくか、自由に考えてもらって現場を助けてもらえる方が嬉しいですね。
(章子さん)
自分自身で物事を考えて率先して動ける人材はありがたいですね。待ちの姿勢ではなくて自発的に、こういう商品を作っていこうとか提案してくれるような。そういう人材を求めているところです。あとはやっぱり、経験があればうれしいんですが、基本的にやる気さえあれば出来ると思うので。あとは、パソコンに強い人だと本当に助かります。私自身も未経験の業界でしたが、周囲に助けられて今を迎えていますね。
そういえば章子さんはどういう流れで入社されたんでしょう?最初から家業を継ぐ気だったんでしょうか?
(章子さん)
いや全然(笑)他にやりたいことがあったので。いつの間にか、もう7年目になるんです。 その前は特別支援学校で美術を教えていました。その前は美術館にいたり、金沢にいたりと、美術と関係のある場所で働いていました。それから地元に戻ってきて、会社が新事業部としてteshio事業部を立ち上げ、面白いことをしているので、興味を持ちはじめて入社して現在に至るっていう感じですね。
どうですか?入社前のイメージと。思っていた通り働けましたか?
(章子さん)
最初は本当にもう波乱万丈でした。今までの物流用の資材では許されていた部分が、一般消費者向けの商品は許されないことが多くあり、慎重に扱うことを徹底していきました。発送、パッケージからもう細かく丁寧な仕事を現場に求めました。今では社内の意識改革にも繋がり、より良い製品をお届けすることに繋がりました。
(社長)
B to Cに近い商材は今まで経験がないため、良い影響を与えています。工場内の製品基準が上がりました。
誰もが通る、必要な苦労だったんでしょうね。
(章子さん)
花業界には、丹波市内にあるプリザーブドフラワーで有名な大地農園さんがあり、色々教えていただきながら現在に至ります。現在では、大きな卸業者に扱ってもらうことが出来てようやくルート開拓ができ、毎年お花屋さんに向けて商品をご提案させてもらうことができています。自社の強みを活かした商品づくりをするために、加工紙の技術を考えながら、新商品開発を行っています。そういったところで、アイデアをたくさん出して、企画や開発、販売等をしてもらえるような人材に入ってもらえたら嬉しいなって思っています。
そうですね。柏原加工紙での仕事にはどういったやりがいを感じられていますか?
(章子さん)
このteshio事業部に関しては実際自分たちで商品をつくって、全国で開催される展示会で実際にお花屋さんの反応だったり、要望を聞くことが出来ます。そういったところで自分発信のものが世の中でどう評価されるのか、反応が直接聞けることで嬉しかったこともあります。お花屋さんが実際にinstagramなんかに喜んであげてくださっていたりすると、『あー、やって良かったなあ』って思う時があります。そういった反応が得られることで、次はこんなのを作ろうかなっていうモチベーションに繋がっているんだと思いますね。
わかりました。あと、これから働くことになる人に向けて、柏原加工紙という会社自体の良さってどういうところにあるでしょうか?教えてください。
(章子さん)
人数が大企業とは違って少ないので、自分発信での『こういう風にしたらどうか?』っていう発案も通りやすいと思いますね。人数が少ない分、風通しがいいと感じています。機械のオペレーターの方は、黙々とコンスタントに働けるっていうところは嬉しいポイントになるんじゃないかなと思ったりします。
(社長)
基本的には一人一台の機械で行われるため、仕事が一人で完結するんですよ。一人で完結できるからこそ得られるやりがいがありますね。もし、やる業務が途中の工程の検査だけだと、やりがいを感じるのは難しいのかなと思います。任された仕事は、受注から出荷まで行えるため、一人一人が完結するような仕事のシステムで日々業務にあたってもらっています。
確かに、よく考えるといきなり玄人さんと一緒に仕事しろって、双方にとって難しい気がしますね。
(社長)
そうですね、仕事の配置が日々変わるわけではないので。その一定の場所で、その機械について詳しくなって、一人前の職人になっていくんですが、そういったところで自分にしかできないっていう技術を得て、そこに自信をもって仕事している従業員もいます。そういったところに自分自身の、会社にいる存在理由を感じてもらえることができます。加工紙メーカーは機械と職人の技術によって商品が製造されているので。
(章子さん)
仕事中は皆さん、それぞれの仕事を任されているので黙々と作業されている感じだったりしますが、休憩時間は、和気あいあいとされています。日々のコミュニケーションが、仕事でも大切になるので。
ありがとうございます。では最後に一言お願いします。
(章子さん)
会社として、今後も加工紙の分野を大きく動かしていきたいなと考えています。現場にもIT化を構築し、タブレットを用いたりすることで、よりスムーズに現場が働けるように進めて行きたいと考えています。teshio事業部含め、色んな業務があります。一緒により良い職場作りや会社を盛り上げてくれる人材は大歓迎です。どの仕事も継続することでできるようになるため、一緒に働いてくれる方を心からお待ちしています。
(社長)
先ほどのSDGsの話の通り、脱プラの時代になりつつあります。これからは弊社としては紙のリサイクル性といったその辺の特徴を活かして、環境に配慮した製品と、それらを強みとした企業として一緒に活動してくれる方、お待ちしています。
※この記事は2021年5月12日に取材した情報をもとに作成いたしました。