ザ・サイプレスゴルフクラブは、ゴルフを楽しむ人たちにとって、誰もが一度は訪れてみたいと思うゴルフ場として知られています。桜、シャクナゲ、深緑、紅葉と四季折々に変化する美しい景色に惚れ込んで来られるお客様が多いのだとか。今回はそんなゴルフ場を運営する株式会社サイプレスクラブに取材に行ってきました。
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・会員制で運営するゴルフ場
・現在の雇用状況とサイプレスで働く魅力
・実際にキャディとして働く足立さんにインタビュー
・今後の展望と求める人材像
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今回は支配人の西山英樹さんとキャディとして働く足立麻奈さんにお話を伺ってきました。
株式会社サイプレスクラブの事業内容を教えてください。
ザ・サイプレスゴルフクラブの運営と、あとは付帯施設として「ザ・サイプレス別邸」という宿泊施設がございまして、そちらの運営管理の2本柱で事業を展開しております。1991年にオープンし、もう34年になります。
「サイプレス」といえば、一般のゴルファーは普段なかなか入ることができない特別なゴルフ場だと聞いていました。
ゴルフ場は大きく分けると、会員制のゴルフクラブと、そうでないゴルフクラブの2つに分かれます。当クラブは、開場当初から会員制のゴルフクラブとして運営しております。
ですので、こちらをご利用いただける方は会員様、もしくは会員様とご一緒にお越しいただくゲスト様となります。仮に一般の方から「サイプレスでゴルフをしたい」とお問い合わせいただいても、会員様のご同伴やご紹介がない限りはプレイのご案内はしておりません。
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なるほど。プレイしたい場合は、現在の会員さんからのご紹介がないといけないんですね。
原則はその通りです。ただ、2015年に宿泊施設をリニューアルしたんですが、そのタイミングから新たな集客チャンネルとして、宿泊される場合にはプレイしていただけるという仕組みを設けました。
それは、やはりオープンから30年以上が経ち、当初からの会員様だけに頼っていますと来場者が減少していきますので、会員様の宿泊やプレイに影響がでない範囲で新たなお客様にお越しいただけるように展開しています。
会員様は現在どれぐらいの数いらっしゃいますか?
今は600名ほどです。当クラブをご利用いただく方は、やはり会員様とそのご同伴やご紹介による方々なので、いろんなエリアからお越しになりますが、基本的には関西からお越しになられる方が多いです。
プロの方も来られると聞いていたんですが。会員さんの中にはプロの方はどれくらいいらっしゃるのでしょう?
会員様の中でプロゴルファーの方はおられません。現在、こちらで所属プロ契約しているプロが2名おられますけども、プロの方々は企業やクラブに所属する形で活動されてる方が多いですね。
テレビなどでもよく見かけるようなメジャーなプロゴルファーの方も何度かお越しいただいたことはあります。
プロの方も来られるというサイプレスにはどういった強みがあるのでしょう?
まず1つは、お客様の受け入れ組数ですね。基本は1日最大30組、120名を上限として、ゆったりとプレイしていただけるように、大勢を受け入れないようにしています。スタート間隔も平日は8分ごと、土日は9分間隔でご案内しておりますので、前後の組との混雑がないよう配慮しています。
また、開場当初から会員制で運営しておりますので、スタッフは会員の皆様の顔とお名前をほぼ記憶してます。それも会員制であることの良さを体感していただけると思いますね。
やはりコースにも何か特徴があるのでしょうか?
全国には約2,200カ所のゴルフ場がありますが、ここまで、人工物が見えないコースはおそらくほぼないと思います。ゴルフ場はすごい広いので、どこかには鉄塔や電柱が立っているのが見えますが、ここはそれらが一切ございません。山の中を散歩しながらゴルフしている感覚になるかと思いますね。
コースの周りに生えてる木からして、外から見ててもすごい綺麗ですもんね。
ほとんどが、もともとこの土地にあった木なんですけども、その当時コースを作られた方が「ここは、ゴルフ場になるためにあったような土地だな」とおっしゃっていたという話を聞いたことがありますね。
実際、目を凝らして見ると、山の麓の方に少しだけ電柱が見えるんですけども、それも『色を分かりにくいように塗ってください』とお願いして対応してもらってます。
都会の雑多な環境から一歩抜けて、緑の一面の緑に囲まれた中で、リラックスしながらゴルフをしてもらいたい。ここはそういうコンセプトで作られています。
西山さんはここで勤められてだいぶ長いんですか?
まだ14年程ですね。もともとこちらでお世話になる前は、海外のゴルフ場で働いていました。家庭の事情で帰国したい旨を会社に相談したところ、たまたま、勤めていた会社がサイプレスのことを知っていたので、『ここで働かしてもらったらどうだ?』と勧めていただいたのがきっかけです。
支配人をさせていただくようになったのは、4,5年前からになります。
支配人はもともと丹波市の出身なのでしょうか?
私は大阪出身で、今は丹波市内にある社宅に住ませてもらっています。
これからここで働こうという方も、社宅に住むことができるのでしょうか?
そうですね。社宅は基本的に妻帯者向けの作りとなっているので、単身者にはここのゴルフ場の敷地を出たすぐ近くの男子寮と女子寮を使ってもらっています。
単身者向けの寮が男女別であるっていうことは、以前から新卒採用をメインに取り組まれてきたのでしょうか?
おっしゃる通りです。当社は基本的にこれまで高卒者をメインに採用活動を実施してきております。地元や近隣市町の高校にも求人の案内をしておりますし、採用実績が多い九州や四国方面にも同様の採用活動をしております。
現在スタッフは何人ほどいらっしゃいますか?
全体で120名ほどのスタッフが勤務しています。そのうち正社員で働いてるのが40名ほどです。全体の平均年齢は約53歳ですが、パート職員の大半がシニア世代で、上は80代の方もお勤めいただいておりますから、正社員だけで言えば平均年齢は少し下がると思います。
ゴルフ場の仕事といえば「キャディさん」というイメージですが、キャディ職はゴルフ初心者でもなれるものでしょうか?
ほとんどのキャディは、入社当初は「ゴルフは知っている」程度です。慣れるまでは少し大変かもしれませんが、必ずしもゴルフの玄人である必要はないです。
他の職種に比べて、夏は暑い中、冬は寒い中、そして雨が降っていても、お客様がプレイされる時は帯同していただくわけですから、待遇面は厚くしています。お客様と一緒に6時間ほどコースを歩いて、お客様のプレイをサポートしなければいけませんので、決して楽な仕事ではないんですよね。
ただ、当クラブの会員様は、他と比べて決して安くはないプレイ料金をお支払いいただいている方々ですので、普段接する機会がないような、企業の要職に就かれているといった方々です。ですので、プレイをサポートしながらも、興味深いお話をたくさん聞かせていただいたり、逆にキャディたちが楽しく過ごさせていただいていると感じています。
キャディ職の方の男女比はどうでしょう?
14名ほどが女性で、男性は2名おります。こちらとしては、キャディ職を女性に限って応募しているわけではありませんが、結果的に女性が多くなっておりますね。
支配人から見て、ここで働く従業員の方々はどういったところに魅力を感じられているのでしょう?
サービス業は、やはり世間的には休日に忙しくなるので、まとまった休暇が取りにくい業種だと思っているんですね。
ただ、弊社では、毎年1月下旬から2月半ばまでの約3週間を冬季休業期間としています。一部出社する部署はありますが、キャディやレストラン、フロントは完全な休みになります。当然、正社員はその間の給料も保証してますので、多くのスタッフがこの休暇を有効に活用していると感じていますね。
足立さんはどちらのご出身ですか?
丹波市の隣の多可町出身です。
ここに入社するきっかけは何でしょう?
転職を考えた時に、家から近いということもありましたが、コロナ禍以降にゴルフを始めたことと、仕事内容にすごく興味があったので、挑戦してみようと思いました。
前の仕事は何だったんでしょう?
前職は繊維関係の仕事でミシン縫製などを担当していました。30歳目前だったし、毎日同じことを繰り返す生活に物足りなさを感じていたので、環境だけでなく職もガラッと変えようと思ったんです。
ここの存在は昔から知ってたんですか?
知らなかったです。身内もこちらでキャディとして働いてるんですけど、その紹介で入りました。
キャディさんになろうって、どういうところに興味があったんでしょう?
最初は不安しかなかったんです。前の職場は冷暖房完備で快適な環境が整っていましたが、キャディの仕事は屋外ですし、あと、コースではすべて徒歩で移動するので体力的な心配がすごく大きかったんですよね。
それで、キャディをしていた身内に『私でもできるかな?』と相談したんですが、『やってたら慣れるよ』と背中を押してもらいました。ゴルフを始めたのもあったし、何より「転職したい!」という気持ちが強かったんで、思い切ってやってみようと決めました。
なるほど。実際にキャディさんをやってみてどうですか?
最初は本当に覚えることが多くて大変でしたね。でも、多少ゴルフをしていたおかげで、思いのほかスッと入り込めました。
2年経った今でも、ラインを読むことはまだまだ難しいですし、覚えないといけないことがたくさんあるんですが、すごくやりがいのある仕事だと感じています。お客様やスタッフの皆さんとコミュニケーションをとって楽しく働かせてもらっています。
キャディ職の面白みややりがいは、どういったところで感じられますか?
当コースはカップまでの距離の表示がないので、私たちキャディがお客様にボールを打つ距離をお伝えして、それを基にお客様が使うクラブを選ばれるんですが、伝えた情報がきっちり合った時や、予測したライン通りにパットが決まった時は、本当に嬉しくて役立てている実感が湧きますね。
毎日様々なお客様とご一緒できるので、お客様との会話もとても楽しいです。プライベートなお話をしてくださる方もおられますし、会員制ということもあって、気さくで素敵な方ばかりです。お客様からコースやゴルフのことを教えていただくこともあって勉強になります。
キャディ職はどういう人に向いていると思いますか?
人を支えたい、楽しませたいとか、サービス精神が旺盛の人とかですかね。
足立さんから見た、ここの職場のいいところは何でしょう?
先輩方がとても優しくて、わからないこともすごく親身になって教えていただけます。環境もきれいで、ストレスなく働けています。
キャディ職は全くの素人でもできそうなものですか?
慣れるまでは大変だと思いますが、皆さん本当に親切に教えてくれるので大丈夫です。
今後の展望を教えてください。
これまで決して順風満帆な道のりではありませんでした。会員制ということもあり、業績が振るわず、新規会員様の募集がうまくできなかった時期もありました。やはり会員様の数が増えないことには経営が安定しないんですね。
コロナ禍初期にも非常に苦しい時期がありましたが、後半になるとむしろ業界全体で業績が上向き、ありがたいことに今でも勢いが続いています。この機会を活かして、5か年計画を策定し、新規会員様の獲得に向けて取り組んでいます。
おかげさまで、当クラブは「行ってみたいゴルフ場」というランキングなどで常に上位にランクインさせていただいています。この評価を維持し、または1つでもランクを上げられるよう、様々なお客様にご満足いただける、「来てよかった」と思えるような場所を目指しています。
これから入社される人はどういう人に来てほしいといった理想の人物像はありますか?
「明るい笑顔とチームワーク」という言葉が会社のベースになってるんです。キャディに限らず、どの部署のスタッフも1人で作業することが多いんですが、お客様にサービスを提供するまでにいろんなスタッフが連携します。そのため、元気よく挨拶ができ、素敵な笑顔で楽しんで仕事できるような人に入社していただけると嬉しいです。ゴルフ経験は問いません。
働いてる間に慣れるでしょうし、詳しくなりますもんね。
私としては、ゴルフは生涯スポーツかなと思っているんです。長くやっていけるスポーツに、若い時分から触れられるのはいいことであると感じています。
ゴルフは審判がいないスポーツですし、良し悪しを自己判断でやっていかないといけないので、そういう中でも自分を律する鍛錬に繋がるという意味でも、ゴルフは従業員にもぜひやってもらいたいですね。
従業員の方もここのコースを回ったりするんですか?
会社の福利厚生の一環で、従業員は仕事終わりや休みの日に無料でコースを回れるようになってます。
キャディもほとんどの方がゴルフをしていますし、キャディ職に限らず、弊社で働くスタッフ全員がゴルフをやってもらいたいですね。ゴルフの楽しさにも触れてもらえるし、実際にプレイされているお客様の考えなどもより深く理解できると思います。
せっかく弊社で働くのであれば、ぜひゴルフをやってもらい、その知見をお客様に還元できるようになってもらうのが理想的ですね。