CEO Interview

経営者インタビュー

井上鉄工株式会社

井上仁司さん

企業情報

井上鉄工株式会社

鉄に関わるものづくり。日々の暮らしの中でなかなか触れる機会はありませんが、建築や工業に関わる大きな機械の部品に鉄製のものが使われている事はイメージできるかと思います。今日は、そんな鉄工の会社、井上鉄工にお話を伺いに来ました。

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・ものづくりに興味がある人へ。最新の機械を使ったものづくりの仕事

・最終的につくり上げるまでの道のりは自分次第。ほぼ全員が一からものを作れるような仕事環境

・新しい機械、技術を導入できる理由の一つは固定費が安いから。都市部の高い賃料の代わりに、お客さんに還元する

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井上社長にお話を伺いました。井上社長は工業系の高校から大阪の大学に通われて、家業を継ぐために丹波市へ戻ってこられました。

例えば、大きなポンプ車用の架台を支える鉄の部品で、井上鉄工でしか作っていないものもあります。試作から関わり30年以上のおつきあいがある仕事もあるそうで、その点に関しては他の会社では作れない技術もお持ちです。

ものづくりに興味がある人へ。最新の機械を使ったものづくりの仕事

社長は一度都市部に出られて、会社を継ぐために戻られたということでしょうか?どこかにお勤めになってからでしょうか?

もう就職も決まって、行きたかったところもあるんやけどね。色々と事情があって帰らなくてはいけなくなって。帰ってきて勤めに行ってもいいよとは言われたけど、 元々物づくりは嫌いじゃなかったからね。車こしらえたりね、単車ばらしたりとか若い時はそんなことばかりしていたので。

ご自身が今社長になられて、先代の社長の時はこれが出来なかったけど、自分の代でこうした、みたいなところもあるんでしょうか。

全然方向が違うんですけどね。親父は戦争から帰ってきて、昔の家は子だくさんで、そんなに裕福じゃないからと言う事で、小学校を出てから神戸に奉公へ行ったんかな。

それで、田舎へ帰ってきたら機械学校がないということで、また弟子に行って野鍛冶を。鉱物を石油で炊いて刃物とかこしらえたりね。

他の鉄工所は一番とっつきやすい建築を皆やり始めたけど、パイの取り合いしてもしょうがないから、今度溶接やりかけて。それで溶接と機械加工をやっていました。

その当時はろくな機械もなかったし、 ほとんど昔は人海戦術でね。工場でも20人程おったから。溶接が15人程、機械加工が4人程いて。そんな事してても売上でお給料支払われへんわって。

 

それで、どんどん機械化していったという事でしょうか。

そうやね。小さい部品ならすぐ終わるけど、大きな部品なら一旦セットすると最低でも1時間とかかかる。1時間ぼーっとしてるんじゃなくて、次の段取りしたらええやんって。1人で2台か3台使えるようにならんと。それで、設備投資もしていった。

工場内を見学させてもらいましたが、本当に沢山の機械がありました。詳しい内容については、井上鉄工のWEBサイトもご覧ください。

ご自身で勉強して使えるようにしていったということでしょうか?

そうやね。メーカーのスクールに10日間缶詰で学びに行ったり。

機械を扱ったりは好きやったけど、入れた以上使いこなさないといかんから。もう必死で。毎晩3時頃までやってたからね。プログラム入れてから、後で動かさなあかんでしょ?あくる日に動かして夜の間にプログラムして。

当時は誰もその機械を使えないし、一人でやってたからね。私が一番若いくらいでみんな先代の時からの職人さんばっかりでしたので。

 

だいたい15年くらい前から、若い子が入ってきて機械を扱える人も増えてきて。でも最初はみんな使い方も内容も分からへん。仕事の細かい内容までは知らんことが多いけど、こういう会社へ来ようかと思う子らはやっぱり物づくりが嫌いと思っている子は来ないね。

デスクワークがしたいなら、鉄工所の求人見て来ないと思うから。

なかなか想像がつきにくい鉄工のお仕事ではありますが、最新の機械に設備投資をされていて、見る人が見ると「おっ」と驚くような機械がたくさんあるようです。実際に井上鉄工で働かれている方も、最初からこの仕事をしたい、これを作りたい、という人はおらず「ものづくりに携わる仕事がしたい」という想いで入社され、一から学んでいくそうです。

最終的につくり上げるまでの道のりは自分次第。ほぼ全員が一からものを作れるような仕事環境

社長の息子さんの専務にもお話を伺いました。専務も社長と同じく丹波市で生まれ育ち、工業高校から名古屋の大学へと進学されました。その後、ご自身で就職先を見つけて神戸で3年ほどSEのお仕事をされていたそうです。

SEのお仕事をされていたんですね。それは社長が機械を使っておられたイメージからご興味を持たれたんですか?

いや、あまり関係無いんですけどね。小さい時から事務所にパソコンが置いてあって。小学生の時はおもちゃのように遊んでいて。それでパソコンは面白いなーっと思ってそのまま大学で情報工学科にいって、腕試しじゃないですけど、就職して仕事して。

なるほど、そちらの仕事が面白かったりはしなかったんでしょうか?やっぱり家業を継ぐ考えがありましたか?

まあ面白いところはあったのですが、家業を継ぐという意識が仕事しながらも半分ありました。小学生の頃から事務所に出入りしていたので、親や社員の仕事ぶりを身近に感じていて、いつかは「自分が会社を」という気持ちがありました。

今、お仕事自体はどうでしょう?楽しんでおられますか?

色んな機械を触るので、様々な技術を結び付けて「もうちょっとこうしたらいいものが出来るな」とか考えながら出来るのは面白いですね。ライン作業の工場みたいに、同じ作業を繰り返すというのは苦手なんで。

働きに来られた方も自分で使い方を編み出していったりするんですか?

機械で加工するのは同じ物ができます。ただ、ゴールまでの(プログラムなどの)道順は人それぞれ多分違うと思う。ある程度の道筋は決まってるので、寄り道してもたどり着く。その中で、自分に合った加工方法であったり、どうやったら早く着けるか、いいものが出来るか色々と試行錯誤できるので、奥が深いと思いますね。

それは面白いですね。実際働いている方で、自分で道筋を決めて完成までやるという方はいるんですか?

大体、ほぼ全員。 今いるメンバーは大体出来ますね。

おもしろそうですね。 工場生産のラインではなくて自分で扱うということですね。

そうですね、お客さんから最終形態は図面でこれ作って下さいって渡されるので、それを作るのは自分なんです。 設計図のようなものは、バラされた状態でくるんですよ。

何だかイメージしてた鉄工業と少し違いました。となると、今後働かれる方はどちらかというと新しいこと、パソコンが扱える人の方が良いですかね。

そうですね、うちも物を引っ付けたりする溶接、溶かして引っ付ける方はパソコン得意じゃなくても全然大丈夫ですよ。その仕事は自分の腕だより。逆に機械の方はパソコン自体は使いませんが、現場で直接機械にプログラムで指示を与えて、加工していきます。初めは分からなくても、一生懸命仕事をやっていくうちにだんだん出来るようになるので、やる気さえあれば大丈夫です。

新しい機械、技術を導入できる理由の一つは固定費が安いから。都市部の高い賃料の代わりに、お客さんに還元する

専務にお伺いします。いずれ会社を継ぐという想いはあると思うのですが、自分の中でこうしていきたいという事があれば教えて欲しいです。

今の会社の体制って、よそではなかなかないんですよね。丹波市以外に、大阪の方を探しても。社内ですぐ隣で溶接して、機械で削ってというのも出来る所がないんで。良いところは活かしつつ、新しいところも取り入れて、例えばパソコン化を進めて。新しい技術を取り入れつつ、効率よくこなせればいいなというのがありますね。

社長にもご質問させてください。今こんな機械を入れれたらいいな、こんなのあったらいいなって思っているものってありますか。

ウォータージェットをやりたいなと思って。水の圧力で、切っていくみたいな。

例えば土管でも、布でも材質選ばないで切れる。それをしようと思っていたけども、うちの仕事としてはそれだけで飯食うのは無理やなって。次に考えるとしたら3Dプリンタを。でもまだ早いからやめときなって、3年前にそれ言われたんやけどね。

社長、夢があるというか、やりたいことがどんどん出てくるタイプなんですね。

元々一番最近導入した機械も加西市から北部は一切同じ機械がないですよって言われて。当初は全く稼働してなかったけど、今は遠くからもその機械があるから出来ますっていう仕事が来とるから。やっぱり、口コミでなかなか広がるまで時間がかかるのは事実。

岡山、姫路とか、遠くからの仕事もあるからね。田舎におって、田舎から出ていかへんのはやっぱり土地代が安い。維持費も安いでしょ。お客さんが高速代払って来てくれても見合う金額で提供できるんで、仕事頼んでくれてるのが事実なんでね。都会に出る方が周りに工場あるし、仕事取るだけの意味で言ったら立地条件としては良いでしょうけど、固定費が跳ね上がってしまう。例えば僕の知っている大阪の会社でも、工場借りて月150万円とかね。月150万円の工場管理賃払って。田舎で150万円やったら何人働けますか?って話で。

そうですね(笑)その分お客さんに提供する品質をよくする。

同じ加工をするにしても、機械代は一緒にしてもかなり安くなるんでね。距離があるから、輸送コストを考えるとどうかわからんけど、それはお客さんの判断やね。

インタビューに伺う前とあとでは、全く印象が変わってしまった鉄工業のお仕事。というよりは井上鉄工のお仕事かもしれませんが、良い設備に投資して、効率よくものづくりをしていく。ただ機械のように生産をするのではなく、機械を扱って新しい作り方を考える仕事を、面白そうだなと感じてしまうインタビューでした。

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