普段、皆さんが着られている服は、買われた場所は覚えていても、作られた場所は?となればわからなかったり、覚えてなかったりすることの方が多いのではないかと思います。丹波市の南部、山南町大河で、1970年から園児服を縫製し続け、厚物製品のハーネス等の産業資材を生産されている、株式会社タケウチ未来製工を取材してきました。
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◆園児服から産業資材まで手掛ける縫製企業
◆広がりを持たせ、ものづくりをしていく為の法人化と社名変更
◆今がまさに未来へ挑戦する時~共に切り開いていく人材を募集~
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今回は、代表取締役をされている竹内真泰さんにお話を伺ってきました。
タケウチ未来製工の事業内容を教えてください。
主に二つありまして、まずは園児服ですね。保育園・幼稚園の制服等を生地の延反から下回り作業、縫製、検品、仕上げ製品までを一貫して生産しています。
スモックやパンツ、子ども服全般で、これは先代の竹内重治がタケウチ縫工として創業した1970年からずっとやっている事業です。
もう一つが厚物製品。厚物というのは高所作業用の安全ベルトとか、電気工事・建設現場で使うハーネスのことで、こちらは今年で7年目になります。
両方とも、メーカーから注文を受けて生産する、加工委託といった形になります。園児服関係は第一工場で、厚物製品は第二工場で生産しています。
途中から厚物製品をやり始めたということですが、それはどういった経緯からだったんでしょう?
私がこの家業に合流した当初から『この先5年くらいでしんどいな』って家族と話をしていたんですね。
子ども服は少子化で数量が減ってくるし、若い親世代が購入する訳で、比較的お金を出しにくい世代なのでメーカーもなかなか値上げもしにくくて。
生産する立場からしても、小ロットで単価が安いのが園児服の宿命なんですね。
事業を継続していくためにも次の柱が欲しかったので、厚物製品のハーネスをやり始めた次第です。
なるほど。いきなり厚物製品をやろうって思って、やれるもんなんですか?
最初は色々と心配な点もありましたが、ミシン屋さんからの紹介でしたが、厚物専用のミシンが必要となり、大きな設備投資でしたので、地元の商工会にお世話になりものづくり補助金を活用し必死になってやってきた感じですね。
周りの環境にも恵まれていました。それに人間、追い込まれるとなんとかなるもんです(笑)
ハーネスとか、産業資材は我々一般人にはなじみがないのでピンとこないんですが、結構需要があるものなんですか?
そうですね、ここ数年の中で影響が大きかったのは、規格の改正があって業界全体で取替え需要が増えたことと、東京オリンピックですね。
そういった大きな工事や建設現場が出てくると必ずと言っていいほど必要になりますので。
ハーネス以外の産業資材は作ったりするんですか?
同じ厚物関係で、安全器具や産業資材等の製品や部品などを請けて作ったりしてます。
工場を見渡すとミシン以外にも、大型の設備を導入されてますね。
大きいのは自動延反機と自動裁断機ですね。以前は手裁断でやってたんですが、どうしても誤差が出るんですね。
布帛等の薄い生地とかになると100枚とか積んで裁断しますんで。
それを全部、積層上下での誤差なく均一に裁断してくれるようになったので、相当作業効率が上がりました。
規模が大きくなると設備は重要ですね。ちなみに、この市内の同業はどういった状況ですか?
縫製業は弊社と同じような状況だった先がやっぱり多くて、ここ最近でも山南地域で2社程廃業又は規模縮小されましたね。
緩やかに辞められるところも増えてきたので、その分の仕事が回ってきたりします。
もちろん、何でもかんでもやっていくのは難しいので、そこは取捨選択させてもらいながらですけど。
こちらでは外国人の技能実習生が多く働かれていますが、どういう経緯で受け入れ始めたんでしょう?
端的に人材不足だったので、実習生を受け入れたのがきっかけですね。
世間一般的に、どうしても目につきやすいのはメーカーなりブランドで、若い人もこういった生産現場よりデザイン製作、サンプルの縫製、アパレルの店員さんの方が華やかに見えたりするのが大きいんじゃないかなと思いますね。
実習生は、現在ベトナムから来てもらっていて、雇い入れる側からすれば以前は賃金も日本人社員と同じくらいでしたが、コロナ禍のここ3年間でベトナム国内の成長で給与も倍になり、もう日本人並み、それ以上の給与じゃないと人が集まらないですね。
縫製は技術・技能職なんです。しかしながら実習生は1,2号生で3年+3号生で2年の計5年(最長)までの在留期間ですので、しっかりと技能を身に付けた頃に実習期間終了となり帰国してしまう。
交代で新たな実習生が入って来て、また一から指導していかないとダメなので、安定的に技術伝承が十分に出来ていけずというのが現状です。
なので今後は海外・国内関係なく、長い目で見て会社を継続的に発展させていく為の雇用を考えていく時期かなと思っているところです。
竹内さんは丹波市生まれ丹波市育ちですか?
そうです。高校は篠山産業高校に行って、卒業した1992年に西宮の瓶を作る会社に就職して、大手飲料メーカー相手に技術営業してました。
なのでしばらくは西宮の方に出てたんですよ。
いつ帰ってこられたんですか?
2005年の6月に西宮の会社を退社して、7月から丹波市に帰ってきてこの会社で働き始めました。
当時はまだタケウチ縫工っていう個人経営の時ですね。親が体調を崩したのが大きな理由です。
昔からここを継ぐ予定だったんですか?
継ぐ予定はなかったですよ、全然。外に出て生活しようと思ってたくらいで。20歳の時に結婚して子どもが生まれて、その頃は若かったし大変やって。
仕事は転勤もなくて面白かったけど、親の件もあるしこっち帰ってこよかということになりました。
元々社名はタケウチ縫工だったとのことでしたが、社名変更はどういった経緯だったんでしょう?
代表交代がきっかけですね。2017年7月に社名を変えたんですが、合わせて法人化した方がええやろうという話もあったので株式会社にしました。
なるほど。タケウチ未来製工の名前の由来は何ですか?
元々のタケウチ縫工という屋号は、“縫工”とついてるので縫製に限った印象を与えてしまうなと思っていたので、広がりを持たせたかったのと、未来に向かってものづくりを通じて、お客さんに喜んでいただくという想いで名前をつけました。
ちなみに、社内に掲げているあの幕は、以前所属していた商工会青年部のOB仲間たちと今でもたまに集まったりするんですが、彼らが代表就任と社名変更のお祝いとしてつくってくれたものなんです。
それは嬉しいですね。
本当に有難いです。
今年で27歳になる息子も丹波市に帰ってきて事業を手伝ってくれていますが、近い将来に親二人が抜けることも考えますと、会社を経営していくにあたって右腕となってくれるような人材が入ってきてほしいなというタイミングですね。
タケウチ未来製工は今後どのような展開をお考えですか?
試行錯誤の毎日ですけど、やはり現時点での主は縫製関係なので、そこから福祉や介護用品で使用する安全器具周り等にも広げていければいいなと考えています。
次の柱を探していくイメージですね。自社ブランドは今後新しい若者が入ってきてくれて、受注している生産がちゃんとこなせた上で検討していければなと。
後は、この業界はどうしても閑散期と繁忙期があるので、閑散期をうまく活用して、例えば入園・入学シーズンに子どもの手提げカバンとか座布団、ぞうきんなどを作ったりしないといけないけど、自分でやりたいけど出来ないっていう人にここのミシンを貸してやってもらうワークショップ(ミシンを使っての縫いもの体験)みたいなこともやれたらなと検討中です。
弊社の商品はOEM(※他社ブランドの製品を製造すること)なので、どんなものを作ってるか、どういう会社かっていうのは案外地元の人にも知られていない側面があるので、そうやって地域の人との接点も作っていきたいなと思っています。
なるほど。今働いている人は何人ですか?
外国人技能実習生が6名、パートが2人、あとは家族の5人ですね。
大体一週間はどんな稼働になっているんでしょう?
平日は8~17時で稼働してもらっていて、入園・入学シーズン等の繁忙期には少し残業が発生したりします。
社員は土曜が第2・第4土曜と日曜は完全休み、パートさんは基本的には土日祝は完全休みにしています。
お子さんがいるような家庭では地域や学校の行事なんかもあるでしょうから、できるだけ融通は利かせています。
今後採用をすすめるにあたり、どんな人にきてほしいですか?
まあ、やっぱり一番はものづくりが好きな人ですね。学歴不問ですし、全くの素人でも大丈夫です。
アイロンとか下回りなどできる作業は必ずありますし、ミシンを覚えたいならちゃんと教えていきますので。長く勤めてくれる方が嬉しいです。
勤務形態は正社員でもパートでも、なんなら内職からでもいいと思っています。丹波市の地元の人でも、子育て終わって時間ができた人とか。
今は実習生の数が多くて、彼らは基本的に休みたくないと言うんですが、でも日本人はそうじゃないので、うまくやっていく必要があるなと。
従業員それぞれの働き方に合わせて、気持ちよく働いてもらえる職場にしていきたいと思っています。
人を育てる上で大事にしてることはありますか?
子育てと一緒で、長い目で見て育てないといけないなとつくづく思いますね。最初からなんでもできる人はほとんどいないんですよ。
私もミシンで縫う方はほとんど出来ないのでまだまだ勉強中です。ありきたりな言葉になりますが、その人の長所を探して、見つけて、伸ばしてあげたいなと。
会社としても今後、新しいことをどんどんやっていかないといけない時期で、会社も成長していく必要があります。
その為にも社員のチャレンジを許容したいなと思っています。
最後に一言お願いします。
ここまでの話の通り、今がちょうど節目で、業界的にはこれまでと同じことをやっているだけだと下火になっていくのが目に見えているので、これから新しいことをいかにチャレンジしていけるかが最大の投資だと考えています。
スタッフからの意見も積極的に取り入れながら、働きやすい環境づくりをしていくので、興味を持っていただけた方は是非一度お問い合わせください。
ありがとうございました!
一見きらびやかに見えるアパレル業界も、そのほとんどでこういった縫製現場があり、一般の人の目には見えないところで支えられています。まさに縁の下の力持ちといった業界ですが、でもここがないと服飾は成立しない。そういったところに魅力を感じられる人は力が発揮できる環境ではないかと感じました。
※この記事は2023年2月6日に取材した情報をもとに作成いたしました。