CEO Interview

経営者インタビュー

株式会社氷上製作所

菓子俊之さん

企業情報

株式会社氷上製作所

丹波市の中心部にある兵庫県立丹波医療センター周辺は、氷上工業団地といい、企業や工場等が立ち並ぶ一角があります。氷上製作所は1963年にラジオやカセットテープレコーダーを製造する会社として始まり、1991年に氷上工業団地に移転。創業以来、数多くの電子機器のプリント基板を設計・製造を手がけてこられました。

さらに昨年には、若者の雇用環境に優れた企業として、厚生労働大臣から「ユースエール認定」を受けました。丹波市に本社を置く企業として成長を続ける企業です。

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・あらゆる電子機器の制御基板を製造する会社

・関連会社との代表兼務体制とその背景

・成長し続ける為に、次の世代へ技術を繋ぐ

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今回は、代表取締役の菓子俊之さんにお話を伺ってきました。

あらゆる電子機器の制御基板を製造する会社

氷上製作所の事業概要を教えてください。

メインは電子機器の設計・製造になります。具体的には、電子機器の中に内蔵されている緑色の「プリント基板実装品」を製造しています。基板に電子部品を載せてはんだ付けし、一部は組み立てまで行い、最終製品としてお客様に出荷させていただきます。

最近では、電動アシスト自転車のハンドル付近についている、モーターを制御する装置などを多く手がけています。

なるほど。電子的な制御をするものに関わっているんですね。

その通りです。例えば、車関係ではヘッドライトの制御基板や、スマートセキュリティのスマートスタートユニットなどの基板も製造しています。以前はカーオーディオの基板作りから組み立てまで行うこともありました。

創業当初は、三洋電機様とのお取引でラジオやカセットテープレコーダーから始まりましたが、その後、三菱電機様とカーオーディオを手掛けるようになった頃から規模を拡大し、今では電動自転車など様々な製品の基板製造に関わっています。

電子機器って今ではたくさんありますよね。

車のバッテリーの交換時期を測定する機器から金融機関のATM基板、医療機器の血液分析装置の基板も製造しています。車や携帯、農機具のコンバインに至るまで、今やあらゆるモノの電子機器化が進み、電子制御が必要な機械には大体基板が入っています。

元々、基板の設計から製造、組み立てまで対応できるというのが弊社の強みです。地元企業から全国的な大手企業まで、ありがたいことに幅広くお取引いただいております。

全国的には競合他社がたくさんありそうですが、その中で取引先から重宝されるのはどういった理由があるのでしょう?

創業が1963年と早く、ノウハウを積み上げてきた歴史があります。設計から組み立てまで一貫して対応できることは、お客様に喜ばれるところですね。大量生産も得意としていますが、現在は多品種少量生産への対応力を買っていただけている実感があります。

世間では今でも「工場勤務=流れ作業」というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、それは大量生産していた時代の話です。今の生産現場は工程ごとに担当を決める専業制に近い形で、各自が自分のペースで作業を進めるのが主流ですね。

やはり設計できると、単純な下請けとは違って付加価値をつけやすい側面がありますよね。

そうですね。ただ「これを作ってほしい」というご依頼だと、どうしても他社との価格比較になり、いわば内職のような業務内容になるので弊社の強みを発揮しにくい状況でした。そこで、平成に入った1990年頃から自社で設計まで手がける体制へと舵を切ったことが、会社の風向きを変える大きなきっかけになりました。

1から自社で設計し商品開発を行うことはあるんでしょうか?

ゼロから自社で何か生み出すということは、これまでありません。お客様から「こういうものを作ってほしい」といったご要望をいただいて、それを形にしたり、回路を設計するなど、あくまでご要望に応じた設計ですね。

氷上製作所はプリント基板の設計・製造を中心にして、それに関連する製品の組み立てを行い、クライアントに納めます。このB to Bの流れが基本的なビジネスモデルです。

会社のホームページやパンフレットを拝見してますと、全国的に有名な企業と沢山お取引されてますが、それらはこちらから営業したんですか?

ほとんどがお客様からの口コミによるものです。以前は営業専門の担当もいましたが、今は置いていません。弊社のような仕事は、一度お付き合いいただくと長く続くため、三洋電機様、三菱電機様のお取引から始まり、徐々に広がっていきました。

取引先のご要望を聞くときは、製造責任者が直接伺う方が、より詳細な提案ができますよね。なので、営業活動は製造部門の責任者や幹部など全員でやっています。

第1工場、第2工場とありますが、それぞれ何をされているんでしょう?

第1工場は主に組み立て作業を行っています。第2工場ではプリント基板を製造しており、主にはんだ付けですね。1階で機械を使ったはんだ付けを行い、2階では人の手作業によるはんだ付けを行っています。第2工場で作った基板を第1工場に運んで組み立て、検査した後に納品するといった流れです。

最近の基板は小さすぎて、昔学校でやったはんだ付けのレベルをはるかに超えてる気がしますね。

昔は部品も大きかったんですが、時代と共に小型化が進んでいますので、人の手ではできない作業は機械でやっています。一番小さい部品で0.4mm程になりますので、検査も肉眼ではなく高性能の拡大鏡やカメラでチェックしています。

その一方で、そうした中でも人の手でしかできない作業もありますので、機械と人との役割分担が進んできましたね。

関連会社との代表兼務体制とその背景

御社の敷地は相当広いですが、最初からこの敷地だったんですか?

創業時の場所から、1991年に今の場所に移転してきたのですが、当初はもっと広かったんですよ。駐車場として使用していた土地の一部を他社にお譲りして、現在の規模になりました。この辺りは氷上工業団地といいますが、弊社はその一期生だったんです。

菓子社長は何代目になるんですか?

氷上製作所の創業から数えますと、5代目になります。私は関連会社である加美電機株式会社で社長をしておりまして、昨年から氷上製作所の社長も兼任することになりました。そのため、加美電機から来た社長としては2人目です。

氷上製作所と加美電機では相互にその社員が行き来することはあったりするんですか?

両社で行っている業務内容は同じですので、出向という形でお互いに行き来する社員もおりますし、加美電機から氷上製作所に仕事を発注することもあります。お互いに助け合いながら事業に取り組んでいます。

菓子社長が氷上製作所の社長をすることになったのはどういった理由だったんでしょう?

加美電機の前社長が義理の父なんです。私が加美電機の社長になった当時、氷上製作所がリーマンショックの影響で経営難に陥っていました。そこで義理の父が氷上製作所の社長として立て直しを図ったんです。

従業員を1人も解雇せず、経費削減等を進めて黒字を確保し、売上が徐々に回復していきまして。再生の目途がついたタイミングで、私が経営を引き継ぐことになりました。

なるほど。菓子社長はどちらの出身ですか?

出身は富山県です。妻が丹波市の出身で、義理の父がこの事業をしていましたので、結婚を機に『うちで働いてみないか』と声をかけていただいたきっかけで、丹波市へ来ました。

妻は、苦労されてきた父親の姿を見ていたこともあって、事業を継ぐことにはかなり慎重でしたので、私も悩みましたけどね。

最終的にはご自身で選んだという感じだったんでしょうか?

義理の父から声をかけていただいて、「断る理由が見つからなかった」というのが正直なところですね。ここで挑戦しないのは、自分に負けたような気がしますし。もちろん、引き受けた以上は自分の責任ですから、頑張るのみです。

お住まいは丹波市なんですか?

そうです、氷上町に住んでます。当初は加美電機に勤めあげると思っていたんですが、結果的に氷上製作所で働くことになりましたので、もしかしたら今では社員の中で私が一番職場に近いところに住んでいるんじゃないかと思いますね(笑)

成長し続ける為に、次の世代へ技術を繋ぐ

これからの氷上製作所の展望を教えてください。

やはり成長ですね。グループ全体で売上50億を達成した時期もありましたが、今後は丹波市にしっかり腰を据えて、この会社で売上100億を目指して成長し続けていきたいです。

この業界は意外と狭く、良くも悪くも評判がすぐ広がりますから、今お取引のあるお客様を大切にして、品質、納期、コストもしっかり守り続ける。そうすれば必ず見てくれている企業がありますので、地道にいい知名度を築いていきたいと思っています。

業界的にはまだまだ伸びていく市場かなという印象ですがその辺りどうでしょう?

そうですね。今ではどんなものにも電子制御が搭載されていますので、今後もなくならない業界だと思っています。ただ、海外勢も力をつけるなか、競合に負けない強みを築いていく必要があります。ますますロボット化、電動化、AI導入と進む中で、多品種なものをロット数を問わず対応できる弊社の強みを活かしていきたいです。

先代から続く「できないとは言わない」を企業理念に、どんな小さな仕事でも真摯に向き合うことを大事にしていますね。

会社を拡大していくにあたって、どういう人が来てほしいとかありますか?

今はやはり若い人ですね。経験豊富なベテランがそろっていますので、彼らの技術を受け継いでノウハウを積んでもらいたい。そして会社とともに成長していってくれる次世代の採用を強化していきたいと考えています。

性別は全く問いません。女性にも子育てがひと段落したということで、正社員として応募してこられる方もいらっしゃいますよ。

ちなみに男性の方が向いてる仕事って言ったらどういう仕事になるんですか?

機械をいじったり部品交換がありますので、大がかりな機械を触る業務は男性がやはり向いています。また、一部の設備は24時間稼働のため夜勤もあり、そちらも男性中心で対応しています。

工場での業務は、やはり職人的な技術や経験が求められる作業が多いですか?

それはあると思います。はんだ付けや検査にもやはり訓練が必要です。特にはんだは、気温や湿度で状態が変わるため、目に見えないノウハウがあったりします。

だからこそ、今後も長く健全な経営を続けていくためには、会社の核となってくる若い世代を育てていきたいです。

未経験の方が入社して、一人前になるまでにどれくらいの期間がかかりますか?

配属先や作業内容にもよりますが、1年である程度そつなくこなせるようになります。最初はどうしても、普段見慣れないものを製造しますので、自分が何の為に今の作業をしているかわかりにくい側面があります。でも、3年もあれば業務全体が把握できて、仕事が楽しくなってくると思います。

専門的なものを製造するので、入社当初は戸惑うかもしれませんが、OJTで基本的な教育を行い、その後は先輩社員について技術を学んでいきます。1つの工程ができるようになればそれを任せていきますので、最初は真面目にコツコツ取り組むことが大事ですね。

最近ユースエールの認定を取得されていましたが、どういった理由で取得されたのでしょう?

弊社の社員は約140人で平均年齢が約40歳なので、やはり若手採用のために取得しました。丹波市には工場が数多くありますので差別化の意味もあります。高校生にとっては社名だけではどんな会社かわからないでしょうから、少しでも知名度を上げたいという想いもありました。

認定は毎年更新が必要で、継続も簡単ではありませんが、それだけ若手の採用と育成に熱心な会社だと知っていただければ嬉しいです。

140名いらっしゃるということで、それはパートも含めてですか?

ほとんどが正社員で、パートは10人程です。正社員のうち約40人は技能実習生を含む外国人になります。ちなみに男女比は6割が女性です。

これは業界全体の傾向ですが、重いものを運ぶような作業はほとんどなく、どちらかと言えば軽作業で日々同じ作業をコツコツと進める仕事が多い分、女性の方が向いている傾向が強いですね。社内は冷暖房完備で、夏は涼しく、冬は暖かいので、女性でも気持ちよく仕事をしてもらえる環境は整っております。

ちなみに社宅はありますか?

借り上げの社宅を用意できますので、市外から働きに来られる方でも、安心してお越しいただけます。

最後に、未来の社員となる人にメッセージをお願いします

「プリント基板」や「はんだ付け」と聞けば、難しく感じるかもしれませんが、作業は丁寧に教えます。社員はみんな社交的ですし、働く環境も整えています。

未経験の高卒でも、工業科・普通科等は問いません。半数近くの社員は高卒で入社して活躍しており、学歴に関係なくキャリアアップを目指せる会社です。「何を習ってきたか」よりも、「どういう人か」を大切にしていますので、共感できるところがあれば、ぜひお越しください。

企業情報

株式会社氷上製作所